青春VAN日記57
新宿三越の巻 その20(1976年2月)
<青天の霹靂>
新たなる76年度商戦に向けて忙しい毎日を送っている最中、
青山本社において、75年度秋冬期結果報告の販売部店長会議が開かれた。
我が店は、対前年・売上予測140%。返品予測90%である。
自信を持って出席した。
この年の都内各店の売上はまあまあであったが、問題になったのは、会社営業規模の拡大と共に返品量が増加していることだった。・・・商品の作り過ぎ、納品過剰なのだ、V社決算が心配である。
つづいて、99ホールに場所を移し、本社企画・販促が出席し、76年の新ブランドについての説明があった。
それは、
「SCENE」と「Niblick」の新ブランド登場であった。
「SCENE」は、ジーニングなアウトドア・スポーツのイメージ。
「Niblick」は、オフ・デューティな大人のカジュアル。
米国は西海岸の明るい日差し、ロッキー・シエラネヴァダの大自然。UCLA,UCB,スタンフォード大などの文武両道にいそしむ健康的な環境イメージ。
バック・パッキング、サイクリング、ローラーボード、フリスビーなどのスポーツ。
サーフィン、ウインドサーフィン、ヨットなどのマリン・スポーツ。
「ヘビー・デューティー」という新語と、「機能こそファッションである」というポリシー。斬新なラガーシャツとブッシュパンツ、デイパックの組み合わせ。
デモ・スライドに映し出されたイメージ・ビジュアルとBGMのジョン・デンバーのカントリーな歌声は実に心地良かった。
まさにFEELS SO GOOD!(Chuck Mangione)
これらは”トラディショナル命!“の私にとっても、東部とは異なる西部の魅力である。
このブランドには完成されたウエスト・コーストのライフスタイルがある。私も、アメリカ大好き少年の一人である。・・・これはイケルぞ。
きっと、日本一の我が販促の力もあいまって成功することだろう。
そして会議の最後に、新ブランド発足に伴っての販売部新体制・人事異動が発表された。
「都内各店の新体制・新店長を発表する」・・・。
なんと!・・・その店長の中に、私の名前が無かった・・・。
( しまった、三越で、返品制度を批判したり、お付き合い買物を拒否し たりしたことが問題にでもなり、三越から拒絶されたのだろうか?
そんな事は無いはずだ、私には、フロッシャム岡田部長がついている 。それとも、いままでの売上実績が、ようやく本社に認められ、
やっと本社勤務に戻る事が出来るのだろうか? )
・・・はたしてどっちだ?
・・「横田には、営業2部2課に異動を命じる」・・・。
「よっしゃー!・・・ちょっと待てよ?」
「え! 何ですかそれは? 営業2部2課???
どこにあるのですかそれは?」
それは、いままでに、社内で聞いた事の無い呼び方の部署名であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく
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