青春VAN日記64
本社営業の巻 その7(1976年4月)
<丸井グループ・大飲み会>
VANとラングラーの営業マン総勢10数名を引き連れて、宮部さんが連れて行ってくれたのは、新宿三丁目にある居酒屋「どん底」であった。
もちろんその店名の由来は“ゴーリキー”の戯曲からなのだろうが、いかにも戦後の山の手アプレゲールの集まりそうな昭和のインテリムードがあって、由緒あるロシア文学情緒の、店全体が骨董品のような居酒屋であった。
店内はといえば、早稲田文学系の小説家、あるいは新劇の“赤毛物”俳優や研究生、哲学系学生運動家、といった人達が、奥の薄暗いテーブルでマルクス主義の議論でもしていそうなムードであった。
上の階からはトロイカの合唱の歌声が聞こえてきた。
( ・・・昭和30〜40年代、ロシア文学や社会主義は、文化人の必修科目だった。新宿・歌声喫茶“灯”でも、ロシア民謡がリクエスト1位の時代だった。・・・ )
そんな店に、今をときめくVANの軟派的思想な私達が?
(石津社長から同じ言葉がリンク先ページに有ります。)
・・・・・ 心配は全く無用だった ・・・・・。
すでに相当の常連客であったらしい宮部さんや昇さんを出迎えてくれたのは、お店のスタッフの北村秀行さんと佐々木雅史さんであった。
(新宿2丁目が近いせいか接客女性の気配は全く無し。)
しかしながら店のスタッフ達は、面白人間揃いで仲間感覚、笑いの絶えない店だった。
私達もサービス業界の人間であるが、この店のスタッフ達はタレント揃いであった。肩肘を張らない、まるで友人の下宿で一緒に飲んでいるような居心地の良さ。
川島さん、佐野・包国・金澤君、ラングラーの小林君たちも大いに飲んだ。
きょうは宮部さんが付いているのだ、大船に乗った気分なのだ。
痛飲また痛飲。いやが上にも盛り上がりまくる。
ところで、この店は夜が更けてくると、次々にお客さんたちがやってくる。
不思議な事に深夜0時を過ぎた頃から店内は満員となる。
ふと気が付くと、一緒に騒いでいた人達に、ドーモ見覚えがある。
あのシャボン玉ホリデーの小松政夫さん、こわいろ芸の団しん也さん、
そして狂言の右近さん、おかまの小曾根ちゃん、・・・
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1981年Kent Party、六本木“テニスクラブ”にて
団しん也氏と横田君 |
とにかくいろんな人がいて驚いた。
どーやら有名人の隠れ家であったらしい。
私達は自称“盛り上げ研究会”。サービス業のプロである。
小松さん達もすっかり出来上がってしまったらしい。
“宴会芸研究会”の小松さんと団さんが“新ネタをみせてやろう”と立ち上がった。
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まぁ、怖いですね、皆さん、私の顔こんなになってしまいました。
わたし、誰だかわかりますか〜。
小松政夫、いいます。
電線音頭ではお世話になりました。
ベンジャミン伊東との名コンビ
今でも昨日の事のように思い出します。
ちなみに、『あんたはえらい!』
『にんどすはっかっか、
ひじりきほっきょっきょ。』もわたしでした。
それではまたお会いしましょう、
さよなら、さよなら、さよなら
も、わたしでした。
(眉毛の濃すぎる淀川長治さんを演じてました、失礼しました。)
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“ものまね・作業員シリーズ、大型電動ノコギリで角材を切るところ”・・・
「ういーん、ういーん、・・きーん、ガリガリー・・・、」
モーターの音が高くなったり低くなったり、二人でドップラー効果までを声で表現!
「お・、おもしろーーーーーい!もっと、もっと!」
余りの楽しさに、終電が無くなっても誰も帰らない。
《 ・・・この“三丁目宴会芸研究会”は、いつしか “新宿おもしろグループ”の赤塚不二男大先生、居候のタモリさん、そして山下洋輔、中村誠一、坂田明先生達と合流し、やがて昭和の新宿未明時を大騒ぎの“るつぼ”に巻き込んでいくのでした。・・・ 》
私達があまりにも騒ぎすぎて腹が減ると、カウンター内の北村さんと佐々木まーちゃんが“どん底ライス”(林ライス)なるものを作ってくれます。
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“どん底”店内 |
メニューにはそんな料理は書いて無い。
たぶんまかないの裏メニューなのだろう。
有りあわせの肉とキャベツをソース炒めして、皿に盛ったご飯の上にぶっ掛けて食べる。
「 どーだいウメーだろ? 」北村さんもすでに顔は真っ赤である
気が付くと、店のカウンターの中に佐野雅男君が入り込んで、無許可で得体の知れないカクテル(ニセどん底カクテル)なんぞを作っている。
それを飲まされた元青学社交ダンス部部長の包国君はおかま達と狂ったように踊り、
北村さん昇さん小林君達は私のデタラメギターで唄らしきものをがなり合っている。
川島さんと金沢君はぶっ倒れている。
・・・すでに外は明るさを増してきた。・・・
ああ!地球が回っている、頭の中がグルグル回っている。
・・・もう飲めない・・・収拾が付かない・・・だめだこりゃー!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく
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