続・青春VAN日記11
破産財団の巻 その11(1979年初夏)
<さらに押し寄せるお客様>
さて、本社ビル1FにVAN・SHOPが営業を開始してからというもの、開店の情報が広まるにつれ、またザ・ヴィーナスのヒットにも連れて、様々な方が店を訪れるようになりました。
日本中のアイビー世代の意志が青山に集まり始めたのです。
メンクラ、平凡パンチ、ポパイ、ホットドッグ誌の告知力は強力でした。
毎日のように、店宛もしくは私宛の手紙が届くようになりました。
冗談のような話ですが、手紙の宛名が、“東京青山VAN横田店長”・・だけで届くようになったぐらいでした。(外苑前郵便局の太田さん、ありがとう。)
<アイビーファンからの手紙>
・・・たくさん頂いたお手紙中から、1通ご紹介します。
清瀬市のH・Hさんより
「ご開店おめでとうございます。先日、12chのVANの番組を見て、
居ても立ってもいられなくなりました。思い起こせば小学5年の夏休み、高校生のイトコにもらったステッカーが出会いでした。中学・高校と訳も知らずにB・Dとローファーで過ごし、その頃のVANは私にとって神様以上のものでした。学生時代、ノートに書いているのは、トラッドモデルのイラストばかり。
(・・中略・・)
現在、私は小学校の教師をしております。子供達がよく遊びにきますが 部屋の中を見て、先生はどうして何でもVANなの?と聞きます。それは、お前達が10年たったら分かるよ。と答えます。今は何も知らない子供達ですが、将来の青年達のためにも、VANの灯をともし続けてください。 VANを愛するものより・・・。」
・・・話は前後しますが、テレビ東京(12チャンネル)では、ドキュメント「青春の日本列島」シリーズの中で、「甦るかVAN!」という特集番組を制作してくれました。破産後の社員達の日常を追った物でした。(なんと恥ずかしながら私が主演だった、あ〜恥ずかしい・・)
これを御覧になった方が多かったようで、たくさんのお便りを頂戴しました。静岡県のある大学生は、学内生徒達の再建の署名を送ってくれました。北海道の女子高生からは、ぜひVAN・SHOPで働きたいという手紙や、中にはファンレターまで頂きました。(本当に感謝感激いたしました。)
<御来店する全国アイビーファン>
ある日突然、真っ赤のブレザー軍団が押し寄せました。栃木の神島さん率いる、アイビークラブ“ブレイズ”の皆様でした。長身の国体バレーボール選手達を含めたメンバー達のカッコ良さは抜群のものでありました。
神島さん達は、その後ずっとVAN再建イベントや石津先生の講演等に御協力下さいました。
宇都宮の大湊さんは、「ノベルティ」という名の喫茶店を営業されていて、店内の内装がすべてVANノベルティという、料理や飲み物の器も含めて店と言うよりは博物館のような素晴らしいコレクターの方でした。(オークション等で揃えたのではなく、御自分の青春の日々に収集した一品ごとに想い出のある正しいノべルティのお宝でした。)
“ちゃーびらさい”“いみそーりー”
お二人のウチナー紳士が御来店しました。伺えば、遠く沖縄から上京との事、感動しました。
沖縄のアイビークラブの嘉手刈康夫さん(沖縄県庁勤務)と照屋林永さんのお二人でした。お二方とクラブ員の皆様には、再建に向かって、ヴィーナス沖縄旅行やウインドサーフィン日本選手権・沖縄世界選手権大会と、公私に渡って、本当にお世話になりました。
ある時は、騒がしいお二人が御来店されました。
「ここや、ここや!わてら大阪から来ましたんや!」と喋り続けるのは、漫才に歌にと、只今売出し中の“ザ・ぼんち”のお二人でした。
青山通りでのTVのロケ仕事のついでによく寄って頂いたのは、ハンダースの皆さんでした。私と同じヘアスタイルにしたいと言うので、近所の山口理容店までお連れしました。(アゴ勇さん、金蔵さんたち。)
“横田さん、うちの放送局でディスクジョッキーやりませんか?”と葉山から来てくれたのは、FM湘南海洋放送局の松本文一郎さんでした。
撮影用の服をよく借りにて、VANの宣伝をしてくれたのは、スタイリストの“まさきたかし”さんでした。
フジテレビ・クイズ番組製作の小松さんからはファッション問題づくりの件で、服飾用語について、よくお問い合わせを頂きました。
・・・この青山VAN・SHOPの床下には、まさしくVAN先輩達の、目に見えない巨大な遺産・お宝が眠っていたのです。
VANが提案した、“for the young and the young−at−heart”
Kentが主張し続けた、“Kent in TORADITION”・・・!
アイビー、トラッドの基本である、“よく遊びよく学ぶ”“質実剛健”“伝統や自然環境を大切にしよう”などの考え方とは、だれしも一度きりの人生生活を、より明るく元気に楽しいものにするための
ヴァン・ヂャケットのライフ・スタイル(生き方)の提案だったのです。
そして、この提案にご同意頂いてきた日本中のお客様達の力によって
今、VAN再建は良い方向へと兆しが見えてきました。
私は、たまたまこの時代のVAN店長というだけのことで、驚いたことに、テレビの人気番組の小川宏ショー、3時のあなた、11PM、等の番組にまで出演することになってしまったのでありました。
(・・・勢いとは恐ろしいものです!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく
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