青春VAN日記62
本社営業の巻 その5(1976年3月)
<お洒落な歓迎会>
新しく自分の居場所となった営業デスクに座り、ふーっと一息ついた途端、目の前の電話機が突然鳴り響いた。
「はい。Kent営業、横田でございます。・・・」
「もしもし、ヨコタさんですか?はじめましてえー・・・」
え?若い女性の声だ。
「はい。どちらさまですか?(ドキドキ)」
「わたしよ、わたし。だーれだ。・・やだーわからないのー」
「そう仰られましても、困ります。どちら様ですか?」
「あなたの目の前をよく見回してくださーい。」
私が慌てて周囲を見回してみると、1列向こうの机で若い女子社員が手を振っていた。
「どおー驚いたー?。私、営業2部に配属になった鈴木優子と申します。・・・これから、ヨロシクね!」
・・・・ああ、驚いた。こんなのありかよ!・・・。
「連絡があります。
今晩、杉山部長が新配属の方の歓迎会をなさいます。
私も出席するので、ヨコタさんも絶対来てね、じゃーネ!・・・」
これがVAN娘風のやり方なのか?・・・ビックリしたなーもう。
杉山部長が連れて行ってくれたのは、芝 “東京プリンスホテル”であった。
鈴木嬢と私は部長のタクシーに同乗させていただき、エントランスに着いた。ベル・ボーイがドアを開けてくれた。気分は実にエグゼクティブである。
宴個室の準備が整うまでと、カウンター・バーでカクテルをオーダーする杉山部長。
「ドライマティ二―をドライでね!」
・・・・・・おー、イアンフレミングだ! クール!
「君達も好きなものを飲みなさい。」
・・・・・・わー、ソフィスティケイテッド・チーフ!
まるで洋画のワン・シーンの様なその華麗なお姿、身のこなし。
思わず私もシナトラ風に「ストレート・ノ−チェイサ−!!」
そうか!これがKentの大人の世界なのか!
なんと鈴木嬢も、私服のワンピースに着替えた姿はラウンジのムーディな照明の中でオフィスとは見違えるレディの雰囲気。グラスを持つ手が美しい。
私は一流ホテルのバーは初めてだった。
映画の中でしか見たことの無い世界だった。
ラウンジ・ピアノの“ミスティ”が静かに流れるなかで、他のお客様達も、品良く静かにアルコールを愉しんでいる。実に紳士的である。
池袋や新宿のクラブやスナックとは別世界の、伝統と品のある格上の雰囲気だ。
一目でわかる身だしなみの良い男達が、知的な会話を静かに愉しみながら、極上のスピッリッツをゆっくりと味わい、紫煙をくゆらせている。
私は、自分自身も格上の大人になったような気分になり、言葉使いまでが一流紳士に変化してしまったように感じた。
ここはまさに大人の世界。エグゼクティブのアフターシックスだった。
初体験のホテル・バーラウンジは、クラーク・ゲーブル風のモデルを使った各種の「Kentポスター」や、「Kent・TVコマーシャル、(唄ダイナ・ワシントン、縁は異なもの)」の映像イメージにぴったりの世界だった!
「これこそ、Kent for the exclusive man!だ」
良い経験をさせていただきました。
・・・・・杉山部長ありがとうございました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく
鈴・木・優・子・・さん? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?
うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
わ か ら な い。
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