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青春VAN日記95

本社営業の巻 その38

<北海道サイクリング旅行E>

洞爺湖の温泉に頭までつかり、ひたすら体力の回復に努めた私達は、いよいよ最終日のコースを迎えた。


内浦湾をグルッと廻り、駒ケ岳・大沼国定公園を越えて函館までである。

さすがの青年達も筋肉痛に苛まれ、豊浦から森駅までJRで輪行した。

おかげで時間的余裕も生まれ、大沼公園での景色と食事をたっぷりと楽しめた。


そして大沼公園から函館への20kmの下り道は、爽快の一語であった。

風を切りながら、思わず全員が歌い出してしまった。

“〜はーるばる来たぜハ〜コダテ〜”(いい大人が大声で・・・)


4日間、自転車で道西を走り抜いた私達にとって、眼下に函館市街を一望するこの道は、その達成感を一段と盛り上げてくれた。

“苦あれば楽あり”最高の気分であった。函館市内では、五稜郭にも行った。修道院も見た。函館山にも登った。

だが一番の思い出は、夕日に染まる函館山のふもとにあった一軒の古いひなびた“銭湯”に皆で入り、旅の垢を落とした事である。

・・・裸電球の外灯がほのかに灯る玄関には、年季の入った古い暖簾。

番台のおばさんにお金を払って中に入ると、
              脱衣場には竹編みの脱衣カゴ。

天秤式の鉄製の大きな体重計。ビン牛乳の並んだ年代物の冷蔵機。

薄暗い高い天井には大きなプロペラ扇風機がゆっくりと回転していた。

まるで北海道開拓時代から存在しているような風情の地元の古い銭湯だった。

常連の入浴者達の会話には北海道の生活のにおいがあった。

裸電球のセピア色の照明の中で、洗い場に並ぶ男達の頑丈そうな裸体に、北海道を強く感じた。

蝦夷富士のタイル絵に湯気の立ちのぼる大きな湯船にゆったりと浸ると、心地良い筋肉疲労の体に、北海道ツーリング旅行の達成感が五体に染み渡るのであった。

湯気の中に満ち足りた4人の笑顔が溢れていた。



そして私達は、
    夜の青函連絡船に乗り込み、ツーリング旅行は無事終了した。

港から離れてゆく船上から見えた函館市街の夜景は、宝石の様であった。

思えば都会の喧騒の中で、私達は自分自身と対話する事を、次第に忘れ去っていく。その生活は、朝起きてから夜寝るまでの間、一瞬の休みもなく、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、あるいは仕事や遊びでの対人関係に追われ、ほんとうに一人ぼっちの自分の心を覗き見ることは、だいぶ難しくなってしまった。

自己を確認する事を忘れ、他者ばかりを批評、批判する社会風潮。

文明の利器に囲まれた生活は、果たして人間にとって良い事なのだろうか?

私達は、進歩した社会の多すぎる情報量に自分自身の理解・判断が追いつかず自分の位置を見失い、流されてしまいがちである。

日常生活に追われ続け、少々“心のゆとり”が無くなってきた時には、男はおもいきって旅に出よう。

自然の風の中を走りながら、

裸の自分の心と、語りあい、慰めあい、励ましあう。

生命溢れる自然の大地は、必ずなにかしらの力を人間に与えてくれる。

縫いぐるみでは有りません
ほんものの“クマ”さんです。



そんなわけで、

私達、悩める4名の若者達は、弥次喜多珍道中を続けているうちにも、それぞれ北海道の大地の恩恵をしっかりと頂戴して、自己を再確認する事が出来たようでありました。



偉大なるかな大自然! 北海道よ、ありがとう。




   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく

           











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