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青春VAN日記74

本社営業の巻 その171976年6月)

<丸井様用76’秋冬物・展示説明会>

初夏のこの季節は、展示会のシーズンである。

各取引先に対しての“秋冬商品の展示会・受注会”が長期開催され、
会場の356別館ショールーム、99ホールは多数のお得意様で連日賑わう。

私たち丸井グループの場合は、お得意様の丸井商品本部の皆様、
丸井各店の売場担当者、
V社販売部の各店リーダー、そして担当営業の4者を一同に会して開催される。

V社側からは、各チョップの企画、制作、販促の担当者が出席して、今下期商品の説明、マーケティング戦略の説明を行う。

そのプレゼンテーションは99ホール・ステージにおいて、メンクラ・モデルを使ったファッション・ショーやビジュアルによる解説で大々的に行われる。

・・・さて、ここで困った事がおこった。・・・

実は、先週の丸井商品部での商談の折、例によって私の商談を面白がって後ろで聞いていた鈴木商品本部長が突然言い出したのである。

「横田センセのトラッド話は面白いから、
今度のVANさんの展示会では
Kentのファッション・ショーのプレゼンテーターは横田君にやらせよう!」

「エ?エ−っつ」

「わかりました。いいですよ」
        なんと石川主任が快諾してしまったのだ。

OH MY GOD! アイエナー!)

「石川さん!今年の
Kentの商品傾向は“ブリティッシュ”ですよ!
それに対して私の好きなのは“1型トラッド”ですよ・・・。
私が話したら3ボタンモデルばかり注文が増えてしまいますよ!
それでもいいんですか?」

「横田君よ、
全国のトラッド・ショップが飽和状態で売上が停滞する中で、
我社が“今年はこれだ!”と言えば、各店のバイヤーはこぞって、その商品を注文するだろう。しかし全国のトラッド・ファンが本当に欲しがっているものは新しいトレンド品ばかりだろうか?日本中のトラッド店が“ブリティッシュ”を売っている時に、丸井の Kent shopでは1型モデルが充実していたらどうだろう・・・。

鈴木本部長は、いつもお前の話を聞いているうちに、丸井独特のマーケット特性を考え、差別化するためには、丸井の“トラッド・ショップ”は基本型中心で行こうと、そうお考えになったのではないだろうか?・・・」

「しかし、我社の企画の方針というものが・・・?」

「馬には乗ってみろ! 社内には俺が話を通す!」

かくして、Kentファッション・ショーのプレゼンは私がやることになってしまった。

司会業は学生時代に経験があるとはいえ、しょせんシロートである。

しかもショーに出演するメンクラ・モデルさん達は、日本の超一流である。

アダムス社長の井出さん、そして力石さん、横田臣さん、中島武二さん、長沼淳さん、北上純さん、達。
昔から
MC誌面を飾った読者あこがれのモデルさん達である。

キラ星のようなモデルさん達を相手に、私ごときがKentの解説をするなんて!

これには、盛り上げ“命”の私もさすがにびびってしまった。

さっそく同期のKent販売促進担当、新庄君の所へ相談に行く。

「何をビビッテるんだよ。俺達Kentの展示説明会だろ。

パリコレもテッド・ラピドスも、そんなもん俺達にゃ関係ねえ。
俺達Kentの考えるトラッドなんだ!お前さんなら、トレンドのブリティシュなんぞ気にしねえで、モデルに着せた服の歴史・ディティール・由来・Kentの良さ・能書きをしゃべりまくれ。

たとえばトレンチコートだったら、第1次世界大戦・英国陸軍・塹壕戦・クリミア戦争のラグラン公話、エポレットにDリングの由来・バーバリー防水生地の由来・・・

はては“暮らしの手帳”の防水テストでKentのトレンチが国内最優秀品と。どーだい、お前さんなら台本もいらねえじゃないか。

ミスター・ケント君よお!
お前さんの普段どおりでいいんだよ!」

横田・新庄コンビ

彼らはすでに別ページにも登場していました。
それは・・・・・!!

「SURE!ありがとう!」圧倒的に気楽になった。

前の晩から考えていたコーディネイトの、シアサッカーの4Bダブルジャケットにレジメンタルのバタフライを決め込んだ私の脳裏を石津社長のお言葉が横切る。


「私はこの歳になっても、明日の行動予定を思う時、前夜に考える。
“いったい何を着ていこうか”“何をしようか”と。


どんな場所であろうか?
なんの集まりなのか?
どんな人達がいるのだろうか?
どんなふうにみんなを喜ばせてあげようか?
 
今では、これが楽しみでもある。
これがT・
P・Oということなんだよ。
この気持ちを失った時、お洒落を語る資格は失われてしまうのだよ。」


そうだ!私の頭の中には、いつでも石津社長が付いていてくれる。

当日、大勢の“ブリティッシュ・スタイル”の関係者の中での、1型横田スタイル。

・・これがかえってKentらしいと、丸井様バイヤーの評判をあげた・・

そして、ファッションショーでは、ベリー・スペシャル・ワンパターンの横田節連発。

これには、憧れのモデルさん達の顔にも笑いがあふれ、面白がられてしまった。

かくして、プレゼンは、丸井様をはじめ、我が丸井担当販売部の星崎君達にも好評を博し、成功裡に終了したのであった。

( ひよっとすると、
  昼食にお連れした吉橋のじゅうじゅうが効いたのかもしれない )



  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく









“VAN SITE”SEISHUN VAN NIKKI 74
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