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青春VAN日記66

本社営業の巻 その9(1976年5月)

<同期仲間の酒飲み話>

話は前号の1978年より、1976年当時に戻りまして、

青山3丁目歩道橋の夜景 本社本館夜景


例によって、同期仲間で仕事帰りに軽く一杯飲んでおります。

場所は青山「野里」です。
老夫婦のつくる“おでん”は、お二人の人生の様に
、よく味のしみ込んでいるものでありました。いつもV社員達でいっぱいの店でした。

「女なんてみんな同じさ」

と口火を切ったコルシーニ担当の包国(カネクニ)君が言い出しました。

「だってさ、どんな女にだって、いいところもあれば悪いところもあるんで、まあ、一生連れ添ってみりゃ、結局はプラス・マイナス・ゼロなんだろーな。ネ? みんなプラス・マイナス・ゼロなんだからさー。つまり女はどれでも同じよ。」

 この場では、彼だけが、ただ一人の妻帯者でした。

彼の奥さんというのは、青学大社交ダンス部長の彼の下級生で、部長の彼は
“ダンス練習にかこつけては、パートナーの彼女を抱きしめて口説き落とした。”

という逸話の、同期の間では評判の、かわいい女性でした。

「いやあ、それ程でも・・、でもね、あいつには他の女に無い良いところがあってねえ、つまり悪気がないんだなあ。だからさ、おれがたとえば超美人でも少々我儘という女と結婚したとしても、どっちが幸せかといえば、こりゃ同じ事なんだよ。長い間には、結局、プラス・マイナス・ゼロだもんなあ。」

男どもは、ここでシーンとしてしまう。 
(皆独身である。口出し出来ない。)

ひそかに、彼の奥さんと架空のわがまま美女を天秤にかけているのか、はたまた、おのれの恋人を天秤にかけているのか、しばし沈黙に耽るのであった。

ついに哲学的ムードの慶大法学部卒の檜森くんが口を開いた。

「いや、つまりは、同じ事だろう。つまりさ、男女の問題なんてのはさ、いつだって問題は自分の中にしかないんでね。いつか理想の相手が現れて、その時はうまくいくだろう、なんて考え方はおかしいし、完全無欠な女なんているわけないんで、つまり相手の問題ではないんだよ」

明冶学院小林寺拳法部卒で禅にも詳しい佐野くんがちゃちを入れる。

「それにしちゃ、おまえさん、いつも、いい女いないかなあっていってるけど、あれはどーなのよ。」

「いや、だからさ、俺は今、理想を述べてるんじゃないか。こうありたいっていう願望をいってるんだよ。結局、いくら捜してもいい女ってのはいないんだよな。いや、こりゃいい女だと思っても、できちゃうとすぐ飽きちゃうんだよ。」

「そうなんだよ、飽きるんだよなあ」・・・明冶大卒の金澤くんが相槌をうった。

「飽きたくて飽きるんじゃないんだけどねえ、一生飽きなきゃ、どんなに幸せだろうと思うんだけど、飽きちゃう。」

「だからさ、問題は相手じゃないの。自分の中にあるの。一生飽きなきゃ、なんて考える前に、現在だけでも、この女、一所懸命愛してやろうっていうんじゃなきゃ嘘だと思うな。今だけ、今だけ、と思っている間に、それが積み重なって一生を終わっちゃえば、これが一生愛し続けたってことだね。」

「なに言ってんだい、飽きるって言い出したのは、お前じゃないか。」

「まあまあ、つまりはこうじゃないの、われわれのやってるのは愛とか恋愛とかいう崇高な次元のものじゃないってことさ。」

新しく割り込んできた奴がいる。

「つまり寂しいやつがいて、寂しい女がいて、お互い寂しさを誰かに埋めてもらいたくて
、うずうずしてるもんだから、簡単にぱっとくっついちゃう。つまり寂しいから相手がほしいんで、これは惚れてるってこととは別だね。ところがみんな、この相手が欲しいという感情を恋愛だと思っちゃう。ネ?
だから二人がぱっとくっついても、すぐ飽きちゃうんだよ。寂しさがなくなったら、それ以外にはお互い惹きあう次の力がないんじゃないの。」

春から人事に移動になった横山徹くんだった。去年までは丸井の販売だったが、どうやら、そこで彼女が出来たらしい。笑顔に自信があふれている。

突然、後ろから声がかかった。

「おまえら、青臭い話なんぞしてんじゃねーよ」
・・・石川昇主任だった。

「そーいう石川さんだって、今は独身に戻っちゃったじゃないですか!」

「ギャフン!」

「とにかくヨー、一生、一緒に暮らして面白い、なんていう女、絶対いるわけないんだよ。面白いわけがないんだよ、女なんて」

「そうだ、そうだ」

これは、男全員の大合唱となった。

(・・・ところが石川昇さんは、この翌年、結婚したのであった。あ〜あ!)

・・・と、青山の仕事帰りはこんな具合でありました。




 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく


《  青山歩道橋より246を眺める  》



とりとめもない、でも当事者にしてみればある意味真剣な、
誰かに語りたいという、衝動に近い感情が
アルコールの力に後押しされながら、
この車の流れにも似た止めどない話として、ほとばしり出たのかも・・・。

若いVAN社員たちの青山の夜は、こうして、更けていくのでした。


なんちゃって!!!!!



1976年、丸井チームの箱根旅行の一シーン。
赤・青のボーダー・ラガーを着ているのが包国君。左で何か怪しげな動きを見せているのは、・・・・・・・!!!。





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