続・青春VAN日記110
ケント社の巻 その77(1985年夏)
<アイリッシュセッタークラブ・アメリカ横断旅行⑪>
嗚呼ニューオリンズ3
ニューオリンズ3日目。私達一行はかねてよりの念願であった外輪船によるミシシッピ―川の遊覧を体験した。
まさにあのマーク・トゥエインの「トム・ソーヤの冒険」の舞台。
(※マーク・トゥエインとは、蒸気船の水先人と測深手が座礁を避けるために使った合図の“by the mark twain”、“蒸気船の安全深度約3.6m“から採った名前です。・・とのガイドの説明だった。)
そして又、”オールド・マン・リバー”と呼ばれるミシシッピ川を舞台にした外輪船こそが、映画「ショー・ボート」の世界であった。
「♪オールマン・リバーよ、全てを映しながら流れる大河ミシシッピーよ、ここには、死ぬより辛く生きることを強いられる俺たちがいる。
黒ん坊は働く、ミシシッピ―川で、黒ん坊は働く、白人が遊んでいる間も、朝から晩まで舟を引いて、あの世に行くまで休む暇もない。
オールマン・リバーよ、あなたは何のために生きるのかを知っているに違いない。でも、あなたは何も言わずに淡々と流れていく。
俺達、黒人は、もうへとへとなのだ。うんざりなのだ。
生きるのも嫌だし、死ぬのも怖い。
だけどオールマン・リバーよ、あなたはただ、黙々と流れて行くだけ・・・。」 |
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(1927年、作曲ジェローム・カーン 作詞オスカー・ハマーシュタインミュージカル “ショー・ボート”より )
・・・19世紀、ミシシッピー川を巡航して、船中でショーを見せる外輪式の劇場船、ショー・ボートが人気を呼んでいた。
ショーステージの巡業を続ける船長夫妻と娘と芸人達。娘の仲良しである、ショーの主演女優は白人と結婚するのだが、混血の身であることが法に触れて、去って行かねばならなかった。
やがて娘も、粋な旅の男と恋に落ち、駆け落ちして結婚するのだが、男は博打うちだった。男は多額の借金を残して姿を消してしまう。
娘はナイトクラブに職を求め働き出すのだが、そこで出会ったのは、・・・仲良しだった女優と、姿を消していったあの男だった・・・。
・・・そして、華やかなショーステージの世界を背景にして、男女の愛憎劇と、白人に酷使される黒人奴隷達の過酷な人種差別の実態が繰り広げられ・・・、
そして、重労働を呪う奴隷達の怨嗟の歌声が聞こえてくるのであった。 |
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●21世紀の今、ディズニーランドの外輪船マーク・トゥエイン号を楽しむ人々は、米国人種差別の歴史を考える事があるのだろうか?
・・話は突然日本の戦前時代にワープしますが、会長におかれては、オールマン・リバーの唄を初めて聞いた時の感動を今でも憶えておられました。
時代はデモクラシー。ラジオ放送が始まり、キネマが人気を呼び、飛行船ツェッペリン号の来日した頃の岡山での少年時代・・・。
会長は、学業・スポーツ・服装・やんちゃ・・・と地元では目立つ裕福な紙問屋のお坊ちゃんだったゆえに、心無い級友達から“ニフ”という“村八分的いじめ”の差別を受けた事があったそうです。
その差別された思い出は、今でも夢に見るほど悔しかったそうです。
・・・そんなことから、青春時代の会長は、幼き日の御自身の差別体験もあって、弱い者いじめが大嫌いであり、弱肉強食の帝国主義よりも、弱者救済の社会主義やマルクス主義に親近感を感じていたそうです。(当時の文化人の必修科目だった。)
また、写真家の兄上様が慶応大で左翼思想に傾斜していた事もあり・・、また、姉婿様の兄上があの京大教授の滝川幸辰氏(滝川事件)だったこともあり、けっして軍国少年ではなかったそうです。
(※・・・嗚呼、歌は世に連れ、世は歌に連れ・・・、戦前のモガ・モボのデモクラシー末期の時代。浅草の六区や大阪ミナミの心斎橋筋には、洒落者とデキシーランド・ジャズが溢れていたそうです。
その音楽は、自由と反体制の民意のシンボルでもありました。
そして・・・、浅草や道頓堀川の水面にクラリネットやバンジョーの音が響いたジャズ大流行の名残りが、昭和の下町の“チンドン屋さん”や吉本興業テーマ曲の“ホンワカパッパ”
だったのであります・・・。)
そんな純真な?明大の学生だった頃の会長が・・・、差別され虐げられた黒人労働者の静かなアンチテーゼである、“オールマンリバー”の曲を初めて耳にした時・・・、美しくも素朴なメロディのバラード調のこの曲が、深く心に刻み込まれたのだそうです・・・。
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※私のひとり言・・・平成の今でこその想い出話です。
・・・わが敬愛の会長におかれましては、自民党の総理大臣の先生を筆頭に、政治経財界の大物の御友人方とも、芸能・スポーツ界の重鎮の方々とも広い交流をお持ちだったのですが・・・、新V社時代の石津事務所でのひと時、街宣車も騒々しい総選挙の季節に何故かポツリとおっしゃいました・・・。
「ヨコタ君は誰に投票するんだい?・・・ボクは共産党だな。」
(・・・エッ???)
「・・・ヨコタ君、不思議だが、人間というものは豊かさの中にいる時に、すでに破滅への準備をしているものらしい。
豊かさの中で、人はそれを失うまいとして足を滑らせて破綻へと至ってしまう。
戦争も倒産も、豊かだった時代があればこそ皆起きるのだヨ・・・。」
(エッ・・・・・会長は、もしかしたら、唯物史観・・・???)
私は、その時、全くの冗談と思っていたのですが・・・、
今、改めて考えてみると・・・仕事に対する飽くなき厳しさとは裏腹に・・・・
▼戦後の新劇運動の立役者の皆様との御交流。出世払いでの衣服の提供。
▼旧V社が莫大な利益を上げた時、何回も臨時ボーナスを出しては全部を社員に還元してしまった。
▼左翼系学生でも体育会学生でもノンポリでも差別しない社員採用。
▼旧V社時代の 荒ぶる労働組合に対する太っ腹な対応。
▼周囲から何を言われても、V社の株を上場・公開しなかった。
▼営業成績不振になった時の外車から国産小型自動車へのマイカー変更。
▼御自身のことを経営者とは言わずに校長先生とおっしゃっていた。 |
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・・・・等々、・・・会長は、決して利権主義者や金の亡者では無かった。
もしかして会長はリベラリストとかマルキストだったのだろうか???
しかしながら、よしんば代々木の不破書記長とお知り合いだとしても、私の尊敬と忠誠心は、増す事があれ減る事は無いのでした。
・・・・・・・・・・(※以上は全くの私個人の勝手な想像話であります。)
それにしても、ミシシッピー川は巨大だった。
その満満と水を湛えて流れる様は、まるで大海の様だった。
利根川や筑後川よりも、ずっと大きかった。
外輪船は船尾にある巨大な回転板を機関車の車輪の様に廻し、大量の水を搔いて進むのだが、上流のメンフィス方面に向かう速度は思ったよりも早く、
(※柳川の高須さんの乗るノーチラス号には負けるかもしれない?) |
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フレンチクォーターの4階建ての家の様な大きな船体は安定していた。
雄大なミシシッピーの景色を見ながらのデキシーランド・ジャズ。
御一行は、アーリー・アメリカンの船旅を、ゆったりと楽しむのでありました。
会長の御言葉
「人間は、他人の利益を図らずしては、自ら栄える事は出来ない。
富を一人占めし、金持ちのままで死ぬ人は不幸である。
悠々と貧を楽しむ“悠貧”を持って歳をとるべし・・・・石津謙介」
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく
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出港するショーボート |
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ショーボート上の面々、その2 |
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ミシシッピー川船上よりのフレンチクォーター |
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翻って、2012年の年末時点。
喧しい選挙が始まるようです。
誰を選んで良いやら・・・、どのパーティーに期待して良いやら・・・、
皆目見当が付きかねている御仁が多いのでは・・・・・?
やっぱり共産党かな、この際・・・・・・管理人の独り言!
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