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続・青春VAN日記135

ケント社の巻 その1011988年秋)

<秋の日のヴィオロンのため息③(続・男と女)


「世の中は、実に“不条理”に満ちている。」

かつて戦後文部省の“科学・平和・民主・道徳教育”を受け、勧善懲悪のハッキリした少年漫画やヒーロー物TV番組で育ち、赤胴鈴之助・鞍馬天狗・大岡越前・暴れん坊将軍の正義や、悪と戦うスーパーマン・月光仮面・少年ジェットの雄姿に憧れ、

又、学校では○×式や択一式の正誤明解な答案用紙に慣れ親しみ、文武両道・質実剛健・報恩奉仕・真実一路・焼肉定食・・等と、常に前向きの昭和時代に育って来た単純明快1型思考の私は、物事の善悪・正邪・秀愚等の・・・答えは1つと思っていた。

・・・そして学生時代。

カミュ・カフカ・キルケゴール等の高尚な“不条理文学”とか・・、旧約聖書の“信仰のためには神の命令で息子を殺すアブラハム”の“不条理話”等々は難解で(※殺人を命じる神様などあって堪るか!)1型男にはよく理解出来なかった。

・・・しかし、実社会に出た時、世の中は、教科書では計れない底知れぬ不条理に満ちていた。(※私の不条理話は“道理が通らない、理想と現実の矛盾”の話です。)


・・かつての入社時、デパートに配属され、憧れのKent Shop立派な紳士を目指そう!さあ頑張ろう!と思った矢先、店長や古参店員達から言われた言葉。

「おまえ大学出だと思って、いい気になるなよ!」

さらに先輩の営業社員から言われた言葉。

「販売はモノを売る仕事だ、お前のように人間を売る仕事じゃ無い!」

そして罵声にも耐えて個人売上トップになった時の一部社員の言葉。

「あの野郎、1人で格好つけやがって!」
(※欧米社会では成果を上げると周囲は褒め称えるものらしいが、日本では違う。
“妬み・嫉み・恨み”を手に入れる事になる。
出る杭は打たれるとは・・・なんたる不条理。)


ある時、店頭売場での改装時、古くなった御神体VAN看板を、なんとゴミ捨て場に捨てたV社員がいた。思わず注意すると、
「うるせーな、店長だと思ってデケ―ツラすんじゃネー!」
(※人はなぜ非を認めずに開き直るのか。・・不条理だ。)


とにかく十人十色いろんな社員がいた。
そしてこれら店員の接客ミスによる苦情処理も店長の仕事だった。

部下の不始末も失敗も全てが私の責任になる。(※・・不条理だ。)

内心忸怩たる思いを感じながらも、VANの名を汚す訳にはいかない。店員のミスで御迷惑をお掛けした御客様宅を何度か訪問した。

・・クレーム処理ほど難しく心身が疲労する業務は無かった。
当方の不手際で、怒りと不信感を与えてしまった御客様の心を、どうやって御納得頂くのか。若造の店長には誠意しかなかった。

そしてVAN社員としての立場を考え、個人感情とプライドは捨て、本心から誠心誠意・平身低頭お詫びすると・・・、なんとその御客様は御得意様になって頂く事が出来てしまった。

ああ怪我の功名、ピンチとは最大のチャンスでもあった。
又、ある時は、
遅刻・突発の多い若手販売員が売場係長からクビを言い渡され、何とかして下さい、と本人から泣き付かれた事も有った。

私は人情として、不出来メンバーでも販売員を必死に守った。

そうこうして、時間は掛かってしまったが売場内は次第にまとまり、メンバーの協力があってこそ、百貨店1位の売上を創る事ができた。

さらに、V社倒産時、私の“直営店販売計画”は闘争派労組員から批判を浴び、社内で罵声と暴力を受けた事があった。しかし、ひたすら頭を下げていたら、良識派組合員の同情が集まり、逆に、賛同を得て出店する事が出来てしまった。

(※接客や対人関係の奥義とは、・・・“能弁”よりも“寡黙”であった。
自分が能書きを垂れる事よりも、聞き上手になる事だった。人様に好かれるのは、“主張の強い大輪の花”よりも・・“控えめで美しいりんどうの花”と知った!)


思えば、サービス業とはあらゆる人に頭を下げる気遣いの仕事であり、“実るほど首を垂れる稲穂かな”の世界であり、ある意味、“負けるが勝ち”の職業でもあった。そして、そこでの成功とは様々な不条理に対する我慢や忍耐の対価であると知った。
(※昔映画で見た、渡世の不条理に耐えに耐えながらも寡黙な姿勢を貫く、
・・・ 男“建さん”の姿に学びました。)


古来よりの武道の達人の言葉は、本当だった。
「勝つと思うな、思えば負けよ!」 
「負けるが勝ち!」
どんなに自分が正論でも、力による制圧・支配・洗脳行為では、けっして人々の共感と同意を得る事は出来ない。

「武道とは相手を生かすための正義護衛の技でなければならぬ。」
                少林寺拳法学生チャンピオン・佐野雅男
先生

(イントロがすっかり長くなってしまいましたが・・)

あれから10数年。麻布ケント社の職場にも若い社員が増加した。
10年ひと昔。再び活気を見せる社内風景でありましたが、世代の違う彼らの職業感・常識・マナー・コンプライアンスはひと昔前の“報恩奉仕”時代とは大分違っていたようだった。
・・・そしてある日の昼休み時、なんと、オフィス内で男女の怒鳴り合う声が聞こえて来た。・・・彼らは、・・・社内結婚した夫婦社員だった。


<夫婦の不条理・女の屁理屈>

夫婦喧嘩は犬も食わないという言葉があるが、かりにも職場はON DUTYの場である。PRIVATEの場では無い。

まさか上司・同僚もいる職場で夫婦喧嘩する人間がいるとは!あ~ナンタルチ~ア・・・あまりの事にしばらく見ていたが、一応、両者とも部下である。・・事情も聞いてあげなければ・・。
(※私は家庭裁判所の調停委員では無い。もし店頭なら即クビである。)

どうやら、昨晩、夫の帰りが遅かったらしい・・・。

「あれほど遅くなるなら電話してって言ったのになぜ電話しないのよ。
こっちは車にでもひかれたんじゃないか、事故にでもあったのかと眠れなくて、12時過ぎまで起きていたのよ。そうやって毎晩心配させて、もしあたしが病気になってひとりぼっちで寝込んでいても、あなたは平気な顔をして友達と酒を飲んでいるのよね。
そしてあたしは、・・寒々とした部屋でだれにも看病されずに寂しく死んで行くのヨ・・・。」


(?電話をかけなかった事が、いつしか細君の頭の中では飛躍して、自分が病気になってもほうっておく亭主のイメージに進展している?)

さらに彼女は言う。

「そしてあたしは寒々とした部屋で誰にも看病されずに死んでくのに、あなたは口でウマい事を言っても、私に一回だって思いやりをかけてくれた事が無いじゃないですか・・・。」

(?彼女には未来の部屋の情景がはっきり浮かぶらしく、涙ぐみ始めた。)

「そんなばかなことがあるものか。」
(たまりかねて夫が抗弁すると、もっと大変な事になった。)

「そうですか、なら言いますけど、あなたは去年の結婚記念日にあたしと出かけるって約束しておきながら友達と飲みに行ったじゃないですか、少しでも思いやりがあれば、ああいうことはできないはずです!」

「あれは・・その~・・もうアヤマッテ済んだ事じゃないか。」

「それなら、2年前のクリスマスはどうです。私が腹痛をおこしたのに、医者にも連れてってくれないで正露丸でも飲んでおけ、と言ったきり眠り込んだじゃないの!」

(?なんとも恐るべき記憶力と強引な話術。)


「それも、もう詫びた過去のことだろう・・・。」

「そうやって、私が死んでしまったら、あなたは新しい女をつくるつもりなのね、きっとそうよ。あなたは何と言う人なのよ、それでも人間なの、・・・この悪魔!・・・・」

(?女性の論理とはなんと凄いものだろう、ありとあらゆるネタを持ちだし、原因を解決することよりも、夫を無条件降伏させる事が目的らしい。・・分かりやすく解説すれば・・夫が遅い帰宅の弁明を考えている時には、妻はすでに看病の件を言っている。夫が看病の言い訳を考えている時には、もう死後の妄想話に移っている・・・要は引きずり廻されているのだ。
男は物事の思考を1つの土俵の中で1つずつ考えると言われているが、女性は頭の中に別次元の小さな土俵を数多く持っているものらしい。
これでは護衛機の無い軍艦が突然の航空攻撃を受けている様なものだ。不沈戦艦大和であっても、航空攻撃の前にはひとたまりもない。)


「ああ助けてくれえ・・・。」

(※私にも男女口論の経験は有るが、閉口するのは女の理屈というやつだ。
いや、もっとハッキリ言うと理屈にならない屁理屈だ。
気の強い女性の多くは、興奮すると何がなんでも男を言い負かそうとする。
そこには理屈のすじ道も論理の正しさも有ったもんじゃない。

女性が本来持つ強い自己愛と自己防衛本能の成せる技であろうか。

・・男という物は、舜発的には大きい力を発揮できるがそれは続かない。
怪我をして大出血したりすると、簡単にショック死してしまう。
・・女性は、出産の時など1ℓも大出血しても、死なないらしい。
冬山で遭難事故があっても最後まで生き残るのはたいがい女性だ。
飢餓・寒さにも強く、失恋の立ち直りも早く、長寿なのも女性だ。
そして・・・強い女性の得意な口論の戦法は三つある。

①、一部分をことさらに拡大して責める弱点集中攻撃。

②、どこまでも広げる事実と妄想の混ざった虚構の論理の飛躍。

③、過去に対するおそるべき記憶力の駆使による強引な裏付け。



どうです・あなたにも経験ありませんか?ああ田嶋女史・蓮舫・怖い!


しかし女性の強さの基とは、男には出来ない生物存続のための大偉業、“出産・育児”という大仕事を成し遂げるための強さなのでもあります。
だから男は文句など言わないで女性を大切にして敬い、“ルビーの指輪”も買ってあげなければなりません。・・・ああ不条理?)



・・さて、その場に居合わせた私としては仲裁するしか手段が無く、乗り気には成れなかったが、しかたなく救援に出動した。

「・・どうだろう、A君!君にはすでに女性の凄さ、強さ、恐さというものが分かるだろう?君はヘタをすると、会社での立場、いや人生まで失わされるよ。
魅力的な女性は、その内面にポアゾン(毒)の香りを秘めている。
恐ろしいまでの記憶力・想像力・論理力をも隠しもっている。
そしてアカデミー賞なみの、涙を誘う演技力も持っている。
それはもう超能力ともいうべき力だ。

三段論法でも早稲田の弁論部でも太刀打ち出来ない。ソクラテスやシーザーでさえも奥さんには勝てないのだ。

法律さえも弱者保護?で、寝室に間男を連れ込んだ妻さえ守る立場で書かれている(江戸期なら市中引き回しの上、火あぶりの刑だが)そして子供が出来たらもっと強くなるぞ。・・・だから“負けなさい”、聞き上手になりなさい。

男は体力以外には、口論・屁理屈では女性に勝てないのだ。

(※最近の男は、体力でも勝てないらしい?)

だから明日も夫婦でいたいのなら降参してしまいなさい。女性とは、争うものではなくいつくしむものだ。
・・それとも君も一度、お得意様の苦情処理業務を経験して、ひたすら謝る練習をしてみるかい・・・?」



「・・ところで奥さん!世の中には、暴力をふるう夫というのも存在します。
もちろん暴力は良くない。暴力は裁判でも絶対不利になる。しかし男の多くは、おそらく細君と口喧嘩をはじめたとき、女性の圧倒的な口数と理屈にならぬ屁理屈に言い負かされて、追い詰められて、思わず手が出てしまうのではないだろうか。

問答無用というのではなく、問答がとても成り立たぬから、ついカッとして手を出してしまうのです。女性の頭の良さ・狡猾さ・ずるさには、男は到底及びません。

男はその点、女性よりもずっと単純・小児的な弱者なのです。
奥さん、そんなに御主人を追い詰めてはいけませんよ。
どうしてそんなにまでして勝とうとするのですか?


夫はサンドバッグではありません。心のか弱い生命体なのです。
人間は完膚無きまでに追い詰められると、爆発してしまう。
・・だから吉永小百合さんの演じる賢い女性の様に、男に逃げ口は残しておいてあげるものです。
彼にも捜せば高倉健のような良い所もあるはずです。ダンナを愛しているなら、あなたも“負けてあげなさい”。」




彼女の返事・・・。

「ずいぶんと男に都合のいいお話ですこと!
どうせ私は吉永小百合じゃありません!泉ピン子ですヨ・・!」



(・・・だめだ、こりゃ~・・・。)・・・嗚呼、男と女、この不条理なもの・・・。









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく




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